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小林圭二講演録「底知れぬ泥沼にはまりこむ原子力政策」

市民エネルギー研究所




本冊子は、2006年4月15日におこなわれた、講演会+ディスカッション「チェルノブイリ事故から20年 日本の原子力は?エネルギー政策の失態を問う」(主催:財団法人大竹財団、市民エネルギー研究所)の中で、小林圭二氏(元京都大学原子炉実験所講師)の講演「底知れぬ泥沼にはまりこむ原子力政策」を、できるだけ当日の雰囲気そのままにお伝えするようにした講演記録です。

昨今の原子力に関するきな臭い動きは、過去の亡霊をよみがえらせようとしているかのようですが、プルサーマルは全く必要性がない等、破綻した原子力政策の実態をくわしく、しかも明解に話されたものを、大竹財団のご了承を得て、市民エネルギー研究所でまとめました。多くの方に読んでいただきたいと願って、目次と内容の一部を紹介します。


「底知れぬ泥沼にはまりこむ原子力政策」もくじ

はじめに
特別な交付金目当てに立地自治体がプルサーマルに手を挙げる
プルトニウムをめぐるあわただしい日本の動きはなぜ?
世界は核拡散、核兵器の開発、それから核兵器競争ヘ
アメリカとインドの合意、高速増殖炉は軍事利用で査察逃れ?
世界の流れに逆行する日本
フランスもやめた高速増殖炉
プルサーマルの原理
プルサーマルの必要性はない
崩れているプルサーマルをやる根拠
現実には再処理してリサイクルを無限回繰り返すことは不可能
日本におけるプルサーマルの歴史
高速増殖炉「もんじゅ」の事故で事態は一変
4割節約なんてとんでもないデタラメ
相手の最大の謳い文句、資源節約効果を切る
プルサーマルの安全性の問題では、安全余裕の減少が問題
推進側の安全性の一つの論拠の問題点
プルサーマルにするとどういう安全上の問題を引き起こすか
異質な物質は粉末状態では均一には混ざらない
外国の実績が安全の根拠の足しにはならない
外国よりけるかに高い含有率、富化度の規制値
MOX燃料のほうが安全余裕が低下する
日本の実例はこれからやろうとするプルサーマルの参考にならない
プルサーマルをやると「発電コストが上がる」と規制は緩む
プルサーマルは原子力政策の破綻を繕うためだけ
高速増殖炉の4つの危険性
高速増殖炉と事故
各国の高速増殖炉の問題
日本と目的が違うアメリカ、フランス
<付録> 完全に破綻した高速増殖炉




プルトニウムをめぐるあわただしい日本の動きはなぜ?


「それから、もうひとつは昨年10月に入って原子力政策大綱というのが決定したわけですが、これはこれまで原子力開発利用長期計画、いわゆる<長計>といわれていたものを、計画というとキチンと守らなければらないという縛りがあることから逃げたいのか知りませんけれども、大綱という一段と漠然としたものにしました。そのなかでこれまで実用化目標が消えていました高速増殖炉の実用化目標を2050年頃、商業ベースで導入することをめざす、という表現で現れてきました。

非常に漠然とした表現で、これを具体化したというものとして、去年(2005年)の12月年末の土壇場になって、総合モネルギー調査会原子力部会で資源エネルギー庁の報告が出ました。そこでどういうふうに2050年までの高速増殖炉計画を謳っているかといいますと、『もんじゅ』後の高速増殖炉を2030年前後に建設する、とこれも漠然とはしていますが、そういうものがでました。

その前に高速増殖炉の実用像を描くかという像を2015年に提示したいと、こういっているわけです。2015年は何かというと、旧動燃から始めておりましたいわゆるFBRサイクル実用化戦略調査研究という作業、これが2015年で終わるのです。そこで実用化像を提示する、とこういっているのです。この実態はあとから話します。そういう一連の動きがありました。

さらに国内の動きで大事なことがあります。今年3月に六ケ所の再処理工場がアクティブ試験に入ったことです。国内の動きをこう見ますと、プルトニウムに関して、推進側はこの1、2年で非常に危機感をもってバタバタと動き出した。私はこれをタイトルに示しましたように、底知れぬ泥沼に入り込む状況だと考えておるわけです。

六ケ所の再処理工場が動くと、いったい分離されたプルトニウムをどこで使うかという問題が生じます。本来は高速増殖炉燃料の製造を目的にしていたのですが、高速増殖炉計画が頓挫したため、プルトニウムの使い道としてプルサーマルが持ち出されてきました。この動きが、いままで個別に戦われてきた各地の運動をひとつの大きなネットにつなげるようなベースを作ったのではないかと僕は思っています。
以上がだいたい国内の動きですけれども、国際的な動きも見ておきたいと思います」


世界は核拡散、核兵器の開発、それから核兵器競争ヘ

  技術的には平和利用と軍事利用との間では一切区別がない


「一方、世界的な動きを見ますと、一口に言いましてこのところ核拡散、核兵器の開発、それから核兵器競争、それへの新たな動きの時代がはじまろうとしているとつくづく感じます。ご存じのようにいまは核拡散問題で世界が揺れています。原子力というものを平和利用と軍事利用にわけるという基本的な考え方が世界にはあったわけです。

ただよく考えますと、プルトニウムを作ろうという発想になった原点はなにかというと、まさに長崎型の原爆なわけです。この長崎型の原爆をつくるがために、原子炉というものと再処理工場というこの2つのセットが開発されました。ですから今、平和利用だと称されている再処理工場、あるいは原発の原子炉、これはとりもなおさず軍事技術であるわけです。軍事技術の横流しのようなものです。当初アメリカは濃縮ウランの原爆を、つまり広島型の原爆を最初につくりたかったわけですが、やってみると途中で濃縮が大変だということがわかって、それで途中から同時にプルトニウム爆弾もつくりたいということになりました。そこで開発してきた技術がそっくりそのまま技術として受け継がれているのが、今の原発とプルトニウム利用の世界なわけです。

ですからもともと技術の問題として軍事利用と、いわゆる平和利用との問では一切区別がない。ただ概念的に区別しているだけですが1974年にインドがアメリカとカナダから平和利用でもってして導入した技術と物資をもって核兵器をつくった、核爆発をやったということから、その欺瞞が世界的に暴露されました。

現在はそれがどうなっているかというと、その後インド、パキスタンが、あるいはイスラエルが、そういう平和利用の流れのなかで核兵器の技術を手に入れることになり、そのなかのひとつのパキスタンで核兵器開発の中心になっていたカーン博士の核の闇市場というのが具体的に、特に途上国に核拡散の役割を果たしてきました。

核拡散の問題点というのは国際政治上、非常に厳しい問題でありまして、ブッシュ大統領は恐らく石油が欲しいためでしょうが、ありもしない偽情報でイラクの核疑惑をでっち上げ、結局イラクを占領してしまいました。
北朝鮮とイランの両国は米国にならず者国家と名指しされ、これは危ない、大変だというので、急いで核兵器を開発しようという動きに走り始めるという状況にあると思います」


プルサーマルの必要はない

  プルサーマルの必要性に対する疑問


1.プルサーマルはウラン資源の有効利用(資源節約)にならない
2.余剰プルトニウムの焼却(国際公約)と矛盾する再処理政策
3.高レベル放射性廃棄物の低減はプルサーマルの必要性とは直接関係ない
(以下略)


崩れているプルサーマルをやる根拠

  「プルサーマルは資源有効にならない」は原子力界の常識


「まずプルサーマルはウラン資源の節約にならないという話を最初にいたします。
ごく最近まで表現は別として、原子力界ではプルサーマルは資源問題とは関係ない、資源有効利用にはならないというのは常識だったのです。
(以下略)
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